- その三 -

地染めの準備

色注しが終わりましたら、色を注した模様の全てを糊でカバーしてしまいます。これは、地色を染める際に、染め刷毛から模様を守るために行う作業です。ここで使う糊は、亜鉛末以外は糸目糊と同じ材料を使って作り、少し大きめの筒で同じ要領で絞り出します。友禅染めの過程でここが一番気を遣う工程です。糊が先に引いた糸目糊より外に出てしまうと糸目糊が太いロープのようになったり、コブができてしまったりということになります。また、絞り出した糊の中に気泡もできます。それを針でこまめに潰していきますが、この作業を怠ると後で穴が空き、そこから地色がしみてきて失敗作品になってしまいます。糊をかぶせたら、乾く前にその上からとても粒子の細かい木の「おがくず」をかけます。これは、地色を染める際、染料を吸い取ってくれます。これもまた先人の知恵です。この糊は梅雨時を除けば一晩で乾きます。


地染め

染工の職人さんの工房には着物をいっぺんに張れる
土間があります。本当は山間の空気や水の綺麗なところで作業するのが理想的です。地染めの染料は、途中で足らなくならないよう余裕をもって作ります。大刷毛に適度の染料を含ませて…ということですが、刷毛の含む染料が多すぎると布地の模様の裏面にまで色が浸透して、伏せ糊の効果がなくなってしまいます。また、布地の織りの具合で横糸が太く強い織物の場合は、地色が横糸を這って模様の中まで入り込む原因ともなります。刷毛に含ませる染料の加減、刷毛染めの速さに注意をはらって慎重にかつ大胆に…地染はやりなおしの出来ない大きな動きの仕事です。